2012.12.24

【開催報告】自然のすごさはどこにある?



「地球に負荷をあまりかけず、わたしたちもワクワク!ドキドキ!」 そんなものづくりや暮らしのヒントが「自然」にあります。 カタツムリのカラに学んだ汚れない建物は洗剤を使う必要がありません。 ヤモリの足に学んだテープは、何度もくっついて何度もはがせて経済的。 自然界はすごいアイディアの宝庫です。人の生活をよりよく変える自然や生きものの「ふしぎ」や「すごさ」を、石田先生といっしょに探検しました。

日 時:2012年12月16日(日)13:00-15:30

場 所:メリー保育園(滋賀県近江八幡市)
参加者:主に小学高学年~中学生33名
講 師:石田秀輝 先生(東北大学大学院環境科学研究科教授)
主 催:アスクネイチャー・ジャパン、近江八幡ロータリークラブ
協 力:大阪大学大学院 工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻 加賀研究室大学生

プログラム

13:10-13:25 地球環境問題と私たちの関係を考えてみよう
13:25-13:30 東日本大震災について考えてみよう
13:30-13:40 自然のすごさを利用する技を考えてみよう
13:40-14:00 自然のすごさを体験しよう
14:00-14:20 クイズ(みんなで考えよう!)
14:20-15:20 自然たちでつくってみよう


地球環境問題と私たちの関係を考えてみよう

 

まずはじめに、地球温暖化が起こる原因とその影響をクイズを交えながらお話いただきました。

 

温暖化が進むとさまざまな問題が起こります。例えば、農作物の量が減ってしまいます。熱に関連した病気が深刻になったり、生態系の変化や自然災害が増えます。水不足も生じます。

 

私たちが生きるために欠かせない水。日本人の平均使用量は一人年間1240トン、これは1日3トンの計算です。想像以上に多いと思いませんか? 水がなければ私たちは生きられせん。しかし水をつくることはできません。雨をつくることも、降った雨を溜めることも、水を浄化することもできません。水を得るためには自然の力が必要なのです。

 

私たちはつながりのなかで生きています。自然との関わりを大事にしなければならないことを学びました。

 

東日本大震災について考えてみよう

 

震災により水道水もガスもガソリンも電気も止まりました。私たちの暮らしに大きな混乱や犠牲がありました。

 

一方で、スマトラ島沖地震で一匹も被害にあわなかった動物がいます。それは? 昆虫やトラなどさまざまな意見が出ましたが、答えはゾウです。ゾウは人にはきこえない低周波を足の裏できき、地震が来る前に高台に避難したのです。自然界の生きものはさまざまな”すごい”能力を持っているのですね。

 

自然のすごさを利用する技を考えてみよう

 

電気を使わずに「天然エアコン」の機能を持つ生きものがいます。アフリカに棲むシロアリは、日中50℃夜間0℃になる場所でも、巣の温度をいつでも約30℃に保っています。巣の表面に空いている小さな無数の穴が、温度と湿度を調整して快適な環境をつくっているのです。

 

この他にも、カタツムリの殻をお手本にした水だけで汚れが落ちるタイル、ザトウクジラに学ぶ風力発電機、竜巻に学ぶ強力掃除機などの事例が紹介されました。

 

自然のすごさを体験しよう

 

森や草むらを歩くと「ひっつき虫」がズボンやセーターにくっつきます。でも、どんなものでもくっつくのでしょうか? オナモミを使い、4つのアイテム(ウィンドブレーカー、セーター、皮ジャケット、ぞうきん)を調べました。

 

虫メガネで観察・スケッチしながら、オナモミの先端がフックのようになっていることを発見しました。フックがひっかかりやすい布だとくっつきます。こうしてオナモミは、動物の毛にからみついたりして、タネを遠くに運んでもらうのです。

 

この構造をヒントにして出来たのがマジックテープ。みんなの靴やバッグにもきっと使われていますよ。

 

クイズ(みんなで考えよう!)

 

自然界の生きものがどんなすごさを持っているのかを当てるクイズ。「カタツムリの殻」「ヤモリの足」「サメの肌」「蝶の羽」「アメンボの足」「昆虫の眼」にはどんなヒミツがあるかな? そのすごさを活かしてどんなことができるかな? こどもたちからたくさんアイディアが出ました。

 

例えば「抵抗が少ない体で水中をすばやく進むサメをお手本に船が作りたい」「水滴で体の汚れが落ちるカタツムリの殻をまねすれば、洗剤を使わずに汚れが落ちるお皿ができる」「前・横・後ろも一度にたくさん見られる昆虫の眼みたいな、全方向カメラを作りたい」など、身近なものづくりを考えました。

 

自然たちでつくってみよう

 

ハチの巣は正6角形の部屋が敷き詰められています。これはとても軽くて丈夫な構造で、航空機の翼などにも使われています。

 

そこで、6角形の強さを3角形と4角形と比較しながら実験しました。まず画用紙で3角形・4角形・6角形をそれぞれ18個つくります。それらを一つに組み立てて構造体をつくりました。その上に板を置いて重しを乗せていきます。3角形と4角形は40キロほどでつぶれてしまいましたが6角形はびくともしません。用意していた20リットルタンクも足りなくなり…、こどもたちにも乗ってもらいました。さらに70キロの大人が乗ってもつぶれません。とても強い構造体だということが分かりました。

 

参加者の声

 

こどもの感想
「自然のすごいところを使った製品がもっとできるといいと思いました」
「ハチの巣の構造とオナモミの子孫をのこすための移動方法におどろきました」
「少ない資源を効率的に使うところがすごいと思いました」
「すごくおもしろくて分かりやすかった、かんきょうを大切にしようと思った」

 

保護者の感想
「自然や生物を注意深く読み解くと色々な発見があることに、子供達が興味を広げられて大変よかった」
「今後こどもと一緒に環境問題について考えたりもっと自然にふれて心で感じられるような体験をして過ごしたい」

 

参考
すごい自然のショールーム
講師の石田先生が主宰する、自然の知恵がつまったオンラインのデータベースです。自然の摂理にかなった新しいものづくりや暮らしのためのヒントがたくさんあります。ぜひご覧ください。

 

講師プロフィール
石田秀輝先生
東北大学大学院環境科学研究科教授。工学博士。伊奈製陶(現・LIXIL)在籍中に「自然のすごさ探検隊」と称する集まりを作り、生き物に学ぶ技術に目を向ける。退社後「人と地球を考えた新しいものづくり」を提唱し、ネイチャー・テクノロジーに関わる研究開発を進める。『すごい自然図鑑』(PHP)など著書多数。

 

企画・コーディネート
星野敬子

 

 

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