植物の生きるしくみのたくみさ、敵から体を守る工夫など、知れば知るほど “植物のすごさ” にびっくり!
夏休みのNHKラジオ「子ども科学電話相談」でおなじみの田中先生といっしょに、植物のすごさを体験しました。
日 時:2012年11月18日(日) 13:00-16:00
場 所:八王子保育園(滋賀県近江八幡市)
参加者:主に小学2〜6年生40名
講 師:田中修先生(甲南大学理工学部教授)
主 催:アスクネイチャー・ジャパン、近江八幡ロータリークラブ
協 力:大阪大学大学院 工学研究科ビジネスエンジニアリング専攻 加賀研究室大学生
プログラム
13:10-13:30 植物の“すごい” おはなし
13:30-13:45 実験1:カタバミの葉でツルツルピカピカ
13:45-14:10 実験2:ブルーベリーのむらさきがあか・あお・きいろになるひみつ
14:10-14:25 休憩
14:25-15:10 実験3:タラヨウの葉にてがみをかこう
15:10-15:50 実験4:ヒイラギモクセイのすてきなしおり
15:50-16:00 実験5:植物の”すごい”をいかしたものづくり
植物の“すごい” おはなし
植物は光合成から自分で栄養をつくり、すくすく育ちます。水・空気・太陽の光といった身の回りにたくさんあるものを使うので、お金も特別な物質も必要ありません。
「人間の科学は進化していると言われていますが、科学はこの葉っぱ一枚にかないません」と田中先生。動物は、食べ物を探すために動き回らなければなりませんが、植物は自分で栄養をつくることができるのでその「必要がない」と言います。
しかも植物の育つスピードはとても速いことを教えていただきました。例えば、ご飯一膳におよそ2000-3000粒のお米が入っていますが、たった1-2粒のお米が春から秋にかけてこの数まで増えるのです。
植物のすごさを見つめ直しながら、田中先生の「5つの実験」を行いました。
実験1:カタバミの葉でツルツルピカピカ
動物は敵が来ると動いて逃げますが、植物は動かずじっとしています。どのように身を守っているのでしょう?
庭や公園などどこにでも生えているカタバミという植物には、シュウ酸が含まれています。シュウ酸は酸っぱく、葉っぱを食べる虫たちにとってはいやなもの。カタバミはシュウ酸で身を守っているのです。
このシュウ酸には汚れを落とす効果もあります。そこで実験、カタバミの葉で10円玉を磨きました。葉っぱほんの数枚でみるみるうちにピカピカに。最近では、シュウ酸配合の洗剤も多く見られます。
実験2:ブルーベリーのむらさきがあか・あお・きいろになるひみつ
太陽の光には人の体に有害な紫外線が含まれています。これは植物にとっても同じこと。動物は光が届かない日陰に移動できますが、植物はそうはいきません。それでも元気に生きています。これは、紫外線の害を防ぐアントシアニンなどの色素のおかげです。
アントシアニンがあると花が赤や青になります。この色はハチや蝶を引きつける他に、花の中の種を紫外線から守る役割があります。強い紫外線があたればあたるほど、花は種を守るためにアントシアニンをたくさんつくり、ますます美しく魅力的になります。
アントシアニンは、酸とアルカリで色が変化します。ブルーベリーからアントシアニンを取り出し、紫色が黄色みを帯びたり青くなったりする様子を観察しました。さらに、アントシアニンを含むように品種改良されたじゃがいものポテトチップスを試食しました。紫外線の害を減らす体にいいじゃがいもとして注目されています。
実験3:タラヨウの葉にてがみをかこう
人の体に切り傷ができると、そこから病原菌が入らないようにかさぶたをつくります。それは植物も同じです。虫などにかじられると、傷口を黒い物質で固めて病原菌が入り込めないようにおおうのです。
タラヨウの葉を傷つけると、その部分が黒くはっきり浮かび上がります。このしくみを観るために、先のとがった棒で葉っぱに絵や文字を描きました。そして、この葉っぱに120円切手を貼ってハガキとしてポストに投函しました。みんなの手元に無事届いたかな?
実験4:ヒイラギモクセイのすてきなしおり
植物のさまざまなすごい能力を学んだ後、ヒイラギモクセイの葉脈標本をつくって葉っぱの細部を観察しました。葉脈標本は、水酸化カリウム溶液で葉肉をとかした後、水洗いして乾燥させます。ラミネーターにかければ、きれいな葉っぱのしおりのできあがり。
(水酸化カリウムは危険な物質なので、スタッフが取り扱いました)
実験5:植物の”すごい”をいかしたものづくり
オナモミなどの実をもとに開発された「面ファスナー」や、クスノキの防虫作用を使った「しょうのう」などのものづくりが紹介されました。
参加者からは「いつも見ている葉っぱなのに知らないことだらけだった」「植物の生き方がすごい」「植物からもっといろんなことを学びたい」などの感想が寄せられました。
*ワークショップの内容は、田中先生のご著書『植物はすごい』(中公新書、2012)に詳しく載っています。ぜひご覧ください。
講師プロフィール
田中修先生
甲南大学理工学部教授。農学博士。夏休みのNHKラジオ「子ども科学電話相談」や、日本テレビ「世界一受けたい授業」、NHK「アインシュタインの眼」などにも出演。著書に『葉っぱのふしぎ』『花のふしぎ100』『タネのふしぎ』(サイエンス・アイ新書)のほか、『植物はすごい』(中央公論新社)、『入門たのしい植物学』(講談社)など多数。
企画・コーディネート
星野敬子