2013.02.26

【開催報告】いきものたちの物語をつくろう!


かつて湯田地域の人々の暮らしを支えた平地林「ふくらの森」をフィールドに、『生きものとおはなしする方法』を学ぶ授業を行いました。講師は霞ヶ浦再生事業「アサザプロジェクト」を推進し、また全国各地で子どもの感性と大人の協働によるまちづくりを実践されている飯島博さんです。

 

日 時:2013年2月18日(月)

    授業1  8:50-10:25 3年生

    授業2 10:50-12:20 4年生

場 所:長浜市立湯田小学校(滋賀県長浜市)

参加者:湯田小学校3年生97名、4年生80名

講 師:飯島博先生(特定非営利活動法人アサザ基金代表理事)

主 催:浅井湯田地域づくり協議会、長浜市立湯田小学校

協 力:アスクネイチャー・ジャパン

 

ニオの海

 

「みんなは生きものとおはなしできますか?」この質問からお話が始まりました。

霞ヶ浦にはカッパ、八郎潟には竜、びわこにはニオ(鳰、かいつぶり)、が棲んでいて、生きものたちは自然のことをとてもよく知る先生です。そして滋賀に住む私たちはニオとお話ができるようになれば、びわこのことがよく分かるようになるとのこと。先生の言葉に、こどもたちは早速興味津々。生きものとお話するために大切なことを3つ教えていただきました。

 

 生きものの体のつくり(形や大きさ)

 

哺乳類や鳥、昆虫など様々な生きものを例に、「なぜ頭が小さい/大きいのか」「なぜ首が長い/短いのか」「なぜそこに足が生えているのか」など、生きものたちがなぜその形なのかを考えました。すると、形には理由があるということが分かりました。難しいクイズがたくさん出ましたが、先生のスラスラ描く絵を一所懸命に板書したら、、、みんな答えが分かったかな?

 

生きもののすみか

 

生きものの体のつくりを見て「なぜこんな不思議な形をしているのかな?」と思ったときには、「すみか」がヒントになります。
例えばトンボ。水の中にすんでいるヤゴと空にすむトンボでは、目の大きさが全く異なるのはなぜでしょう。ヤゴの目は非常に小さく、見える範囲も狭いですが、成虫になると前から後ろまで同時に見えるようになります。

他にもメダカの形と大きさから、エサ、すみか、産卵の方法まで色々なことが分かりました。そして今メダカが困っていることにも気が付きました。

 

生きもののくらし

 

霞ヶ浦にすむカッパのお皿は頭にくっついていて、水がしみ込むようになっています。先生によると、ほかにもお皿を持っている生きものがいるとのこと。

答えは、カエル。そこで、身近なふくらの森のカエルのくらしを見つめてみました。

池で生まれ育ったおたまじゃくしが変身してカエルになり、本当は池にいたいけれど仕方なく森に行く理由、そして産卵のときまでずっと森で暮らす理由を考えました。そして、たとえ雨が降らなくても森にいればいつでも水が飲める、体のすごい秘密にたどりつきました。

カエルのすみかが破壊されて困っていることも考えました。地球温暖化、大気汚染、水質汚染、外来魚、道路を走る車。様々な危険にさらされているんですね。「生きものとお話ができるようになると、何に困っているのかが分かり、何をしてあげればよいか見えてきます。」と先生。

 

ニオのひみつ

 

日本で一番大きい湖のシンボルが、日本で一番小さい水鳥。ニオは「ケラケラケラ」と鳴きます。

たくさんのニオが鳴くと、まるでびわこが笑っているように聞こえるそうですが、びわこは最近は笑わなくなってしまいました。

ニオとカモのくちばしの形の違い、足のつきかたの違いから、エサの違いや潜水の得意不得意が分かることを学びました。また、ニオの暮らしにヨシ原が欠かせないこと、最近そのすみかが壊されていることなどを教えていただきました。

 

 

最後に、霞ヶ浦のこどもたちが自然の水辺を取り戻す活動をしていることをご紹介いただき、「今、びわこはどうなっているのか、ニオになったつもりで調べてみましょう」と提案されました。
身近な生きものとお話することで、初めて生きものたちが何に困っているのかが分かり、生きものたちと仲良く暮らすためにはどうしたらよいかを考えられる、と先生。「生きものの目になって考える」という新たな視点を学ぶことができました。

 

 

講師プロフィール
飯島博先生
特定非営利活動法人アサザ基金代表理事  茨城県在住中学生時代に水俣病などの公害事件を知り、自然と人間の共存について考え始める。1995年から湖と森と人を結ぶ霞ヶ浦再生事業「アサザプロジェクト」を開始。人と自然が共存できる循環型社会の構築を目指して、独自のアイデアで様々なビジネスモデルを提案。湖岸植生帯の復元や外来魚駆除事業、流域の谷津田の保全事業などを地域住民、学校、企業や行政、農林水産業を結ぶネットワーク事業として展開している。 アサザプロジェクトは「市民型公共事業」と呼ばれ、これまでに22万人を越える市民が参加。先進的取組として注目されている。 共著等:「よみがえれアサザ咲く水辺」(文一総合出版)/「自然再生事業」(築地書館)/「水をめぐる人と自然」(有斐閣選書)/「地球環境読本Ⅱ」(丸善)/「住民・コミュニティとの協働」(ぎょうせい)他多数

 

企画・コーディネート
山口琴子

 

 

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