2015.11.20

【開催報告】バイオミメティクス国際会議

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当法人アドバイザーで、千歳科学技術大学教授の下村政嗣先生が代表を務める新学術領域研究「生物多様性を規範とする革新的材料技術(略称:生物規範工学)」が主催する国際会議“Engineering Neo Biomimetics VI”が京都で開催されました。プログラムの詳細はこちらからご覧ください。

本会議には、フランス サンリス市のバイオミメティクス研究開発拠点「CEEBIOS」からカリーナ・ラスキン氏がゲストの一人として招かれました。アスクネイチャー・ジャパンは「CEEBIOS」と、自然に学ぶものづくり、環境保全、地域創成などをそれぞれに目指しながら、国際交流を重ねています。そのため、本会議2日目に滋賀県でサテライト・ワークショップが行われましたのでご報告します。

日 時:2015年10月23日(金)
内 容:13:30-15:00 滋賀県立琵琶湖博物館 見学
    16:30-18:00 会議「バイオミメティクスの国際連携」
参加者:32名(海外ゲスト6名、日本研究者10名、滋賀関係者14名)
主 催:科学研究費「生物規範工学」
共 催:アスクネイチャー・ジャパン

生物に学ぶバイオミメティクスにとって、生物資源の収集や保全は不可欠です。そこで、まず滋賀県立琵琶湖博物館の見学を通じて、バイオミメティクスから見る博物館の役割を考える機会を設けました。マーク・ジョセフ・グライガー上席総括学芸員に博物館の特徴や展示を解説していただき、琵琶湖の自然や滋賀の暮らしについて理解を深めました。国立科学博物館や海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究者も出席し、博物館の交流の機会にもなりました。

その後、たねやグループの施設「ラ コリーナ近江八幡」に場所を移し、「バイオミメティクスの国際連携」をテーマに会議を行いました。まず、バイオミメティクス研究会を主宰する高分子学会の事務局長 平坂雅男氏から、バイオミメティクスの国内動向を、最新の製品開発、メディア報道、産業系コンソーシアム設立などの事例を交えて紹介していただきました。

その後、2つの視点からディスカッションを行いました。まず、生物学と工学の専門領域にあるギャップについて、生物学者から見たバイオミメティクスの可能性や、情報格差や技術矛盾を超える手段としての「バイオTRIZ」(生物の機能を工学技術に移転する手法)などを議論しました。

2つ目のトピックスは産業化とし、ビジネスとして成立させるための要件、企業に必要な人材などについて意見交換を行いました。海外ゲストからはフランス、アメリカ、イスラエル、ベルギーにおけるビジネス化の事例やアイデアが紹介され、各国の動向を知る貴重な機会となりました。

この他、教育の重要性についても話題が及びました。若い世代が学際的に学び、あらゆる分野に興味を持ち、日常的に多様な人とディスカッションする場をつくること、その結果が、バイオミメティクスという技術革新を生み出す土壌となる、という意見も出されました。

本会議は、多様な分野と人材の連携を必要とする新領域に対して、国籍も分野も所属も異なる研究者、事業者、行政、教育者が集い、意見を交わす機会として実りあるものとなりました。引き続き、バイオミメティクスを実社会に応用していくための議論を深めてゆきたいと思います。

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