2013.06.30

【報告】第1回バイオミミクリー国際会議



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2013年6月アメリカ・ボストンで、Biomimicry 3.8による国際会議が初めて開催されました。アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、オセアニア、中東、世界各国から250名を超える教育関係者、ビジネスマン、研究者、学生らが集いました。

 

第1回バイオミミクリー国際会議

日 時:2013年6月21日(金)-23日(日)

場 所:アメリカ・ボストン/マサチューセッツ大学

 

3日間に渡る会議の初日は、Biomimicry 3.8 代表のジャニン・ベニュスさんの基調講演でスタートしました。2006年の設立以来、徐々に国際的なネットワークを広げ、今や経済界・ファッション界からも注目されていることが強調されました。

 

そして、このネットワークを今後どう発展させるかが初日の大きな論点となりました。中でも焦点は、データベース Ask Nature 2.0 の構築です。Biomimicry 3.8 は2008年、バイオミミクリーに関するアイディアや情報、技術・商品等を検索できるサイト Ask Natureを構築しました。誰でも無料で数千の事例を閲覧できます。しかしその内容は情報提供という側面が強く、実用化に結びつけるという点において弱い部分がありました。バージョン2.0では実践につながるデータベースを目指していきます。世界各国のツールやプログラムを公開・共有し、多様なプレイヤー(大学、企業、自治体、NPO等)と多様な分野(生物学、工学、経済、教育、芸術等)がアイディアと実践を組み合わせて協働できるようなオンラインプラットフォームについて議論しました。

 

2日目はマサチューセッツ工科大学メディアラボのネリ・オクスマン先生が研究する「マテリアル・エコロジー」が紹介されました。これは自然界で見られる、エネルギーが低い生産プロセスや、資源循環をモデルにしたプロダクトを作る試みです。特にオクスマン先生は、生物学的な材料や化学、構造に着目しています。この実験的な研究は、最新のデジタル工作機器を用いて初めて可能になることも言及されました。特に3Dプリンタは、数種類の材料で多様な機能を生み出すことができます。さらに出力された製品は容易にアップサイクルされます。この特徴は生物学的な生産技術体系と類似するため、新しい生産手法として会場から大きな関心が寄せられました。

 

最終日は作家のエイミー・ラーキンさんが “No Nature, No Business” と題し、自然界の法則に経済活動を適応させる必要性を説き、閉会となりました。この他、大学などの教育機関が取り組むプログラムのポスターセッションや、学生を対象としたバイオミミクリーのアイディア表彰が行われました。

 

3日間を通じ、バイオミミクリーが世界で大きなうねりとなり一つの運動体として影響力を持ち始めているのを感じました。しかし個別の事例となると、既存製品のリニューアルやリデザインに留まるものがほとんどです。生物学的プロセスに基づく革新的な製品開発や社会システムへの応用に対する議論はまだ進んでいません。バイオミミクリーの根本にある「自然と共生するライフスタイル」「有限の地球で生きるためのテクノロジー」については、日本人の自然観や、日本の学術界が世界をリードしていけると感じました。世界とのネットワークを強めながら、日本独自の展開にも力を入れて行きたいと思います。

 

星野敬子(アスクネイチャー・ジャパン 研究員・コーディネーター)

 

 

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