2012.09.26

理事長|仁連孝昭


シロアリは高等な脳を持たないにも関わらず、巣外の高温・低温に影響されない快適な巣を造りあげることができた。人間は高等な脳を持っているにも関わらず人間の造り出した都市はそれほど快適ではなく、地球環境に大きな負荷を与えている。

 

この違いをどのように考えたら良いのであろうか?

 

ひとつのヒントに生命システムの階層性がある。生命システムはアメーバーのような細胞核、細胞膜を持たない生命体が集まり、真核細胞を持った生命体ができ、細胞がそれぞれ機能を別にする器官を形成し、進化した生物体を創りだした。シロアリも人間もここまでは同じである。しかしシロアリは生まれたときは同じメスアリが機能分化してハタラキアリと女王アリに分かれる。ハタラキアリは協働して設計図なしに巣を造る。ここで、シロアリは個々のアリにはない能力を社会というレベルで持つようになっている。シロアリは社会システムとしてより高次の能力を手に入れたのである。

 

シロアリと比較すると、人間はより高次の能力を社会システムとして持つ能力に欠けている。その理由は分からないが、シロアリの社会と人間社会の違いは、前者が自己組織化された社会であるのに対して、後者が何らかの個人を超える権威によって組織化された社会であるということである。

 

自己組織化がどうすれば起るのか、これが課題である。

 

滋賀県立大学

理事・副学長 仁連孝昭

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