「“自然の叡智に学ぶ“ 技術セミナー」(主催:OSTEC)が大阪で開催されました。
第2回 “自然の叡智に学ぶ“ 技術セミナー
「生物に学ぶソーシャルイノベーション ― 個と集団の素敵な関係 ―」
私たちの社会には様々な機械、設備、組織などの“集合体”があり、各々目的に応じて活動を行っています。しかしながら、システムトラブルや事故等により、上手く機能しなくなるケースも多々見受けられます。
それは、集合体を構成している個(部品、個体)が相互に干渉を起こしたり、1つの個の機能不全が他の個へ連鎖して集合体全体としての活動が止まってしまう等、個と集団の関係が崩れている状態です。
一方、自然界には蟻、蜂、魚、鳥など様々な群れ(集団)が、悠久の時間を経て、現在まで、誰に教えられることもなく、あたかも当たり前の様に機能しています。そこには人類が創り出した集合体とは異なるメカニズムが働いているのかもしれません。
そこで、今回のセミナーは、「集団」に焦点に当て、自然の集団のメカニズムに関する興味深い学術的研究、それを活かした製品開発事例、およびパネルディスカッションを通じて、個と集団の“素敵な関係”(集団が最も安定、最も活性している状態)を解き明かし、そこから、我々の組織や社会が直面する多くの困難な課題に対する解決のヒントや答えを探りたいと思います。
日 時:2011年11月28日(月) 13:00-18:00
場 所:大阪科学技術センター 8階 中ホール
主 催:(財)大阪科学技術センター
共 催:日本セラミックス協会・関西支部
後 援:日刊工業新聞社・大阪支社、モノづくり日本会議、人工知能学会
日本機械学会・関西支部、アスクネイチャー・ジャパン
対 象:企業(研究部門、企画部門、生産部門、 経営部門等)、大学、研究機関等
定 員:100名
参加費:一般企業 5,000円
OSTEC賛助会員企業および大学等 3,000円
協賛・後援学協会会員 3,000円
学生 1,000円
プログラム
第一部 講演 13:00-15:10
13:00-13:50
研究講演「粘菌の行動知に学ぶ」
巨大なアメーバ様の単細胞生物である真正粘菌変形体は、迷路を解いたり、最短経路を求めたり、実際の鉄道網に負けないレベルのネットワークを作る能力を持っている。脳も神経系も持たない粘菌が、どうして、このようなことができるのか、「イグ・ノーベル賞」(ノーベル賞のパロディとして、 “人々を笑わせ、そして考えさせる業績”に対して贈られる賞)を受賞した研究についてお話し頂く。
講師:
広島大学大学院理学研究科数理分子生命理学専攻 教授 小林 亮 氏
1982年 京都大学大学院工学研究科数理工学専攻博士課程中退後、広島大学、龍谷大学、北海道大学を経て現職。専門は生物の形態形成・運動・情報処理の数理的研究。
13:50-14:40
研究講演「蟻の社会のケミカルコミュニケーション」
優れた化学感覚をもつアリのような昆虫は化学的な環境認識を頼りに適切な個体行動を選択しつつ集団や社会を維持している。今回は、アリの持つ化学環境センサーのしくみとそれを用いた彼らのコミュニケーションについてご紹介頂きながら、昆虫化学センサーの応用面への可能性についてもお話し頂く。
講師:
神戸大学理学部生物学科 教授:尾崎まみこ 氏
1982年 九州大学大学院理学研究科生物学専攻生体物理化学講座修了、1985-87年 米国バデュー大学博士研究員、1990-91年 独マックスプランク行動生理学研究所客員研究員、1999年-2006年 京都工芸繊維大学助教授、2006年-現在 神戸大学教授。
14:40-15:10
製品開発事例「魚の群れのように走るロボットカー“EPORO” 」
魚の群は、最寄りの仲間の位置に応じて、衝突回避、並走、接近という3つのルールに従って動きを変化させている。魚群のこの3つのルールを適用し、自由に変形可能な群れを形成し、安全で効率の良い走行を実現したロボットカー「EPORO」について、開発担当者から、自然のサイエンスをどのようにして、エンジニアリングへ結びつけたか解説頂く。
講師:
日産自動車㈱ モビリティ・サービス研究所 主任研究員 安藤敏之 氏
1987年筑波大学第三学群情報学類卒業後、日産自動車社に入社。電子研究所にて電子制御開発支援研究に従事。2005年電子情報研究所の主任研究員として生体計測センシング研究に従事。2007年モビリティ研究所にて周囲環境認識技術、カーロボティックス技術、自動運転技術などの研究に従事し、現在に至る。
第二部 パネルディスカッション 15:20-17:30
ショートレクチャー
「自然界における集合体の基礎的な理論解説(”個体”を理解し”集合体・群れ”を平易に紐解く)」
講師:
大阪大学大学院情報科学研究科/大阪大学産業科学研究所/JST CREST研究員 准教授 栗原 聡 氏
1992年 慶應義塾大学大学院理工学研究科修士課程修了。NTT基礎研究所、慶應義塾大学院政策・メディア研究科専任講師等の勤務を経て、2004年より現職。専門は人工知能、ネットワーク科学、複雑系。蟻や蜂など社会性昆虫の行動を基にしたフェロモンコミュニケーションモデルによる渋滞予測システム等の研究に従事。
パネルディスカッション
「個と集団の素敵な関係を構築するために」
自然界の集団から、個と集団が素敵な関係(集団が最も安定,最も活性している状態)を維持・構築するための方策を探り、組織や社会が、直面する多くの困難な課題を解決するヒントを見出す事が出来ないか、講師や参加者と一緒に意見交換を行う。
コーディネータ:栗原聡氏(大阪大学)
パネラー:小林亮氏(広島大学)、尾崎まみこ氏(神戸大学)、安藤敏之氏(日産自動車㈱)
第三部 名刺交換会 17:30-18:00
シーズと参加者ニーズのマッチングの場として、講師を囲んでフリーに懇談して頂く名刺師交換会を行います。なお、名刺交換会ではロボットカー「EPORO」に搭載しているセンサ(レーザーレンジファインダー)のデモンストレーションも予定しております。
詳細はOSTECウェブサイトをご覧ください。