アスクネイチャー・ジャパン連携団体の滋賀経済同友会では、2011年から「自然に学ぶ経済」研究会を設置し、バイオミメティクスやバイオミミクリー、ネイチャー・テクノロジーなどの研究を重ねてきました。
「自然に学ぶ」ものづくりやまちづくりを実践をするためには、異分野連携・研究者と企業のマッチングが不可欠です。生物学者・工学者と経済界のメンバーが直接交流・ネットワークできる場が必要です。そこで、2012年度は事業化を目指し、研究者と活発な議論を行うセミナーを開催しています。
第1回 2012年6月27日
「田んぼ発電、微生物燃料電池について」
渡邉一哉氏 東京薬科大学生命科学部生命エネルギー工学研究室 教授
第2回 2012年7月24日
「バイオミメティクスの現代的意義:生物多様性から学ぶ持続可能性」
下村政嗣氏 東北大学多元物質科学研究科 教授
「大自然に学ぶセラミックスと新型太陽電池」
豊田竜生氏 アイシン精機株式会社L&Eシステム開発部 主査
第3回 2012年9月14日
「植物の構造に見られる材料力学」
小林秀敏氏 大阪大学大学院基礎工学研究科機能創成専攻 教授
「プラズマを用いた超撥水材料の開発 ~表面を制御すること(悪魔と天使)~」
齋藤永宏氏 名古屋大学グリーンモビリティ連携センター 教授
第4回 2012年11月21日
「『自然に学ぶ』粋(意気)な暮らし・社会のあり方」
石田秀輝氏 東北大学大学院環境科学研究科 教授
第5回 2013年2月16日
「生体に学んだ潤滑システム 〜Bio-Starシリーズ〜 河川流・潮流発電への展開」
中西義孝氏 熊本大学大学院自然科学研究科 教授
滋賀 自然に学ぶ経済宣言
私たちは先人たちの時代からこの滋賀で、日々の生活に必要なものや問題を解決するためのものを、自然の恵みを活かして、私たちの知恵を絞って作ってきました。こうしたものづくりやサービスを通じて、社会の役に立つことを喜びとして事業を営んで来ました。
科学技術の発達により、効率的に大量のものを生産したり、今までできなかったことが実現できるようになった一方、こうした技術に基づく過度な人間活動が例えば気候変動などの新たな問題も生むようになっています。
私たちはこの一年間、「自然に学ぶ経済研究会」の活動を通じて、生きものは人間社会とは対照的な方法で、エネルギーを使ってものを作り、循環させ、お互いに支え合いながら、調和した世界を構成していることを学びました。そしてさらに、自然界には私たちが想像する以上に困難な状況があり、利用できる資源は限られているにも関わらず、生きものたちはたくましく、そして美しく、38億年の長い年月を生き延び、そしてその中で次第に洗練されて来たことも学びました。
その結果、私たちは、人間は自然界の一員であり、自然こそが、私たちを支え、私たちを生かしてくれるものだと改めて理解しました。そこで、私たちはもう一度暮らしと事業の原点に立ち返り、生きものたちは問題にどのように対処しているかを真摯に学び、生きものだったらこの問題をどう解決するのか、謙虚な気持ちで考えてみようと思うに至りました。なぜなら、そこには必ず、私たちが今直面している困難な状況、困難な問題を解決する方法が用意されている、少なくともそのヒントがあると確信するからです。
以上のことを背景に、今後も自然と共生する持続可能な循環型社会を作るために、豊かな自然を誇る滋賀で事業を営む私たち滋賀の経済人は、自然に学ぶ経済を実現したいと考えます。そのために、以下のことを行います。
私たちは、
1. 生きものなら問題をどう解決するか、生きものをメンター(先生)として学びます。
2. 自分たちのやり方や作ったものを、生きものをメジャー(モノサシ)にして評価します。
3. 生きものの形や機能に注目し、生きものをモデル(お手本)にします。
4. 子どもたちの想像力を刺激するように、生きものと触れあう機会を増やします。
5. 私たちが学んだ自然や生きものの仕組みを、多くの人々と共有します。
以上を通じて、ものづくり、経営判断、組織やシステムの仕組みなど、経済のあらゆる点において、自然に学ぶことを宣言いたします。
また、以上の取組みを促進するために、以下の提言をいたします。
1. 社会全体において「自然に学ぶ」ことが行われるように、普及啓発、支援を行うこと。
2. そのための研究を継続的に行う環境を確保すること。
3. 世界中から自然に学んだ知恵を集積するデーターベースのネットワークを作ること。
4. その中で特に優れたものや注目に値するものについては、表彰し、普及を支援するなどすること。
5. 自然から学んだ知恵が、生活や産業、ライフスタイルに活かされるような実践活動を行い、それを世界に向けて発信すること。
(滋賀経済同友会「平成24年3月27日 提言書」より抜粋)